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【連載コラム】アニ山本のマーケティング雑記帳④ 緊急対談‼ パーパスがなぜ存在理由と訳されてしまうのか問題

2022.06.30

【連載コラム】 アニ山本の マーケティング雑記帳④ 緊急対談‼  パーパスが なぜ存在理由と 訳されてしまうのか 問題

ユキ山本(以下、ユキ):パーパスがわからないのですよ。
アニ山本(以下、アニ):パーパスは目的ですよ。
ユキ:企業パーパスは企業の存在理由である、社会にどのような貢献ができるのか、自分達の存在理由を考えない企業は生き残れません、などとコンサルさんは言うのです。
アニ:確かに、今はやりのバズワードだよね、パーパスは。
ユキ:受験の時に覚えたパーパスは、目的ですよ。どうして存在理由と訳されるのか?
アニ:この間までは、企業ミッションとビジョンがない企業は生き残れない、とコンサルさん達は言っておったのじゃ。どの企業でもミッションステートメントをホームページに掲げておったのう。
ユキ:ですよね。
アニ:つまりじゃ、企業ミッション、ビジョン、ヴァリューの3点セットを揃えても、足りないものがあったのじゃ。
ユキ:ゲッゲッ!
アニ:長老風の話し方は疲れるから元に戻す。それは、アクションなのだ!
ユキ:行動ですね。
アニ:多くの企業でミッションステートメントを書き上げただけでは、その後のアクションに繋がっていかない。企業価値を高めるための企業活動の方向性を定めることが必要になった。そこで、活動の目的、すなわち、パーパスを考えるようになったのだ。
ユキ:ふむふむ
アニ:活動の目的を考える時に「ガッポガッポ儲けよう」では、いかんでしょう、現代社会においては。
ユキ:サステナブルでないとね。
アニ:そう、企業活動が社会や環境との調和が取れている範囲で、利潤を追求しましょう、と言う事になっている。顧客に価値ある提案を行い、より良い社会へ向かっていけるようにどんな貢献ができるか、考えましょう、と。
ユキ:それは、本音なのだろうか。
アニ:それを本気化するために、行動の目的と方向性を定めたパーパスを社員同士、しっかり共有しよう、という事ですね。
ユキ:つまりパーパスとは、企業活動の目的であり、その活動そのものが企業の存在理由を証明するもの、と言う事ですね。
アニ:その通り!
ユキ:しかしですよ、どうも違和感があるのですよ、パーパスって。
アニ:目的をもって行動しましょう、なんて生活委員の山田さんしか言わないよね。
ユキ:昔から日本では言うじゃないですか、「近江商人の三方良し」って。これって、売り手と買い手だけではなくて、世間にも良い事をなそう、という志ですよね。
アニ:日本では、商売を行う事そのものが、社会の貢献につながる、という思想があった。志という言葉は、「心が指す」というやまと言葉で考えればよいと思うのだよ。パーパスと言う英語ではなくて、「心ざし」です。企業が目指すべき方向性を見事に表す事ができる言葉だと思う。
ユキ:「心ざし」であれば、わかりやすいし、社員にも共有しやすいですね。松下幸之助さんの綱領、とか、三菱商事の三綱領とか、日本にはビジネスを通じてより良い社会や国を作っていこう、企業はそのための社会の公器であり、私物化するものではない、という立派な思想を持った経営者がいたね。
アニ:現代のスタートアップで活躍している若き経営者たちも、社会課題を解決しようと頑張っている「心ざし」の高い人たちはたくさんいる。そのDNAはしっかりと受け継がれていると思う。
ユキ:企業パーパスの時代には、日本人のフェアネスを重んじる文化は追い風だね。
アニ:最近思うのだけど、戦後の高度成長の時代以来、私たちは消費という壮大な旅をしてきた、それが、今、やっと終わりに近づいている。消費の時代には、資源を採取し、効率的に大量生産し、大量に売りさばき、大量に消費し、大量に廃棄していた。もう、このような直線的なモデルは限界なのだよ。
ユキ:サステナブルで循環型の社会モデルに移行しないといけないね。
アニ:企業活動の目的も、それによって、大きく影響を受けている。利潤の追求しか考えてこなかった企業にとっては、まさに存在理由を問われる時代になっている。株主も企業の利潤を絞り取ることから、社会への貢献を重視する方向へ転換しないといけない。つまり、資本主義のパーパスそのものが修正されつつある。
ユキ:パーパスが存在理由と訳されている理由がやっとわかった。
アニ:旅の終わりは宴の終わりでもある。私たちは、これからどんな新たな旅を始めることができるのか、まだ、誰も知らない。しかし、その旅は、私たちの未来に向けた素晴らしいものにしなければならないのだ。Journey to the sky ♪~
ユキ:ゴダイゴがなっているでしょ、頭の中で。

アニ山本(山本一樹)
1982年東京大学文学部美術史学科卒。 株式会社電通へ入社。以来40年にわたって、マーケティング局、クリエイティブ局、営業局と立場を変えながら、マーケティングコミュニケーションの最前線で実践経験を積む。2008年電通タイランドCOO就任。リーマンショック後のダメージから業績を急回復させる。2017年、電通クリエイティブX副社長執行役員として、経営改革を実行。DX戦略の一環として、デジタル時代の新たなクリエイティブ体験を創造する”DENTSU CRAFT TOKYO” を設立。同ユニットはカンヌライオンズで2度の受賞を早くも達成。2021年より株式会社編へ参画。2022年、事業構想大学院大学客員教授。
マーケティングテクノロジーへの過度の依存はクリエイティブコンテンツの退化を招いているのではないかと、危惧する日々でもある。