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巻き込む!オウンドメディアの作り方①

2022.02.22

巻き込む! オウンドメディアの 作り方①

オウンドメディアの時代に求められる編集力とは

私は長年女性月刊誌の編集長をつとめてきました。光文社のSTORYというアラフォー女性のファッション誌や、美STというビューティ誌などご存知でしょうか。幻冬舎からDRESSというファッション誌を創刊して、編集長をしていたこともあります。TOKYO VOICEというフリーマガジンを創刊もしました。編集者になって2022年でちょうど36年。週刊誌から月刊誌、男性誌、女性誌、フリーマガジンと全てを経験してきて今感じるのは、出版社による商業誌の時代の終わりと、オウンドメディアの時代の始まりです。それくらいオウンドメディアには可能性があると思っています。とはいえ企業の発信するメッセージやコンテンツを、単なるPR発想で発信していては、伝えたいことも伝わりません。伝えたいことが伝わるために、大切なことはなにか。それは伝える技術=編集力です。今回はオウンドメディアに求められる編集力について、語りたいと思います。

オウンドメディアの○と×

オウンドメディアとは言うまでもなく企業が「Owned:オウンド」(所有する)メディアのことですが、デジタルシフトの結果、印刷メディアだけでなくデジタルメディアやSNSなど、消費者との接点は多様化しています。今回は主に私の得意な印刷メディアについて考えたいと思います。
オウンドメディアを持つメリットとはとはなんでしょうか?

①顧客と直接コミュニケーションができる
②コストが安い
③コンテンツが資産化される

ではデメリットはなんでしょうか?

①顧客の評価が見えにくい
②顧客に訴えるコンテンツの制作が難しい
③顧客の関心よりも企業の論理で作ってしまう

私が編集していた商業誌というのは、読者が「書店で手にとって、内容を吟味して、購入して」初めて商売が成り立つビジネスです。一方オウンドメディアは「書店で売る」メディアではありません。書店売りのオウンドメディアがあったら素敵だとは思いますが、それはまた別の話。「売る」かわりに「届ける」わけです。商業誌は「実売率」という指標で評価されます。どれだけの読者が買ってくれたかです。その点オウンドメディアは「届ける」ことで実売数に左右されない反面、顧客の評価が見えにくいという欠点があります。顧客の評価が見えにくいと、その顧客に訴えるコンテンツの制作が難しくなります。ターゲットが絞れないということです。顧客不在の結果企業の論理(たとえば新製品を売りたいとか)が優先されて、ここに編集不在のオウンドメディアが生まれてしまいます。

ターゲット設定の難しさ

編集とは「誰に、何を、どう伝えるか」というテクニックです。
メディアを作る時、最初に編集者が考えるのは「ターゲットは誰か」ということです。届ける人に合わせて、「何を(内容)」を伝えるかプランニングします。そしてその内容を「どう(表現)」伝えたら一番伝わるのかを考えるのです。

「老若男女すべての人に伝えたい」

企業側がそう思うのもわからないではありません。
でもすべての人に伝えたいというメディアは、結果として誰にも伝わらないメディアになってしまいます。まずはターゲットを絞り込みましょう。とはいえ絞り込むことはとても難しいことです。そこでプロの編集者が必要になってくるのです。
私たちはよく「魚影が濃い」とか「魚影を見つけた」という言い方をしますが、それはターゲットである読者が見えたという意味でもあります。例えば企業側ががんばって「アラフォー女性がターゲット」と決めたとします。でもそれでもまだとても大まかなターゲット設定です。同じアラフォー女性でも、働いてるか働いていないか、結婚してるかしていないか、子供がいるかいないか、都市生活か郊外生活か……などなど、絞り込む要素はいくらでも出てきます。私がSTORYの編集者だった当時、「東急田園都市線の二子玉川までの40代主婦」というターゲット設定で、読者調査をしたことがあります。京王線でも小田急線でもありません。関西だったら、阪神線ではなく阪急線です。もちろんオウンドメディアにここまでのターゲット設定は必要ありませんが、ある程度確度の高いターゲットを想定しましょう。雑誌の面白さが格段に違ってきますよ。

編集者は通訳

編集者とは、企業と顧客のコミュニケーションの間に入る通訳のようなものです。この図を見てください。そのままだと伝わらない言語を、伝わる言葉に変えることが通訳である編集者の役割です。

巻き込む!オウンドメディアの作り方①

通訳とは相手の言語に変換して伝える役目です。それは企業の伝えたいことを、顧客に響くより魅力的な言葉に変えて伝えることでもあります。より魅力的に伝えるためには、B to CのコミュニケーションをC to Cであるかのように感じさせなければなりません。企業発のメッセージやコンテンツであっても、「自分事化」できるようなコミュニケーションにするのです。それはつまり、顧客の趣味・嗜好や都合に合わせた伝え方が重要だということです。オウンドメディアの編集者という職業はCOMPANY(企業)とCOUTOMER(顧客)のコミュニケーションの間に入って、お互いの関係を幸せなものにする、つまりエンゲージメントを生み出すことが役割なのです。

巻き込む!オウンドメディアの作り方①

そのためには編集者はCUSTOMERについて誰よりも深く知っていなければなりません。時代に対する鋭敏な感性を持ち、観察力を持ってターゲットを捉えるプロフェッショナル。それがオウンドメディアの時代に求められる編集者の資質なのだと思います。では優れたコンテンツを生み出す企画力とはどのようなものか?以下事項に続きます。
(日経BPコンサルのCCL.に連載された原稿を加筆修正して転載しました)